第2章 序章
むかしむかし、このくにがまだあらそいがたくさんあったじだい。
あるところに、イブというなまえのおんなのこと、アダムというなのおとこのこがいました。
ふたりはとってもなかよしでしたが、ふたりのおやはそうではありませんでした。
ふたりがうまれるまえから、けんかをしていてそれがとまることはいちどもないそうなのです。
それでもふたりはきにしませんでしたが、あるひふたりのおやにアダムとイブがこっそりあってあそんでいることがばれて、
ふたりははなればなれになってしまいました。
「どうしてこんなことになったの?アダムに会いたいよ」
そういいながら、イブはまいにちまいにちなきつづけました。
それからすうねんのときがながれ――――ふたりがすむくには、となりのくにとせんそうをすることになってしまいました。
そのせんそうには、アダムもいかなくてはなりませんでした。
せんそうにいくまえのひのよる、アダムはこっそりイブにあいにいきました。
「イブ、きっとぼくたちはこのままじゃずっといっしょにはいられない。だから――ぼくが、まほうをかけてあげる。このまほうはぼくたちをきっとしあわせにしてくれるよ」
そのことばをきいたイブはたいへんよろこび、アダムにまほうをかけてもらいました。
しかし それはきんじられたまほうでした。
そのまほうはかけたにんげんがしんだとき、そのまほうをかけられたにんげんもしぬという、おそろしいまほうでした。
しかし、ふたりにはこわいものなんてもうありませんでした。
だって、ずっといっしょにいられるのですから。
まほうのこうかがあらわれたとき、ふたりのたましいはてんへとのぼりました。
そしていつまでもいつまでもしあわせにすごしましたとさ。