第1章 月がキレイだから
無線で部下全員に用件を伝える。
館の主、その妻、子供全員生け捕りで俺の前に連れて来い。
二人の弟と側近の部下たちが怪訝な顔をしている。
うちの三男が、
こいつらに何かようでもある訳?
などとイライラしながら聞いてくる。
すぐ下の弟は俺の顔を見て何をするのか気づいたのか、
いつもの笑顔とは違う、
いやらしく意地の悪い笑みを浮かべていた。
集められた四人…館の主、妻、息子二人。
さっきからずっと助けてくれだの、金ならいくらでも出すだの…本当に見苦しい。
「ん~どうしようかなぁ。助けてあげてもいいけど、素直に質問に答えられたら…だな」
四人は涙目で強く頷いた。
「この女の子は誰だ?」
浮き輪でも入っているのではと思うくらい膨らんだ腹の主がぼそぼそと話している。
「私の…前妻との間の娘で...前妻には身寄りも無く…仕方なく…」
「で、その娘をこんな風にした奴は誰?」
ニコニコとしていた顔をすっと真顔に変えると
一気に妻の顔が青ざめる。
「えぇ~!ここまできて答えてくれないわけぇ~?まぁ、無理して言わなくてもいいよぉ。おおまかな話はそこに倒れてる男から聞いたしぃ。それにしても、あんたキレイな爪してるねぇ~。」
チラッと三男のチョロ松を見るとコクリと頷いて妻の前に屈んだ。
汚い悲鳴が聞こえ、何でも話すからもうやめて…と。
チョロ松が、どうします?と俺に聞いてくる。
「まだ爪のある指は9本…あぁ、足も入れたら19本かぁ。」
ニコニコしながらチョロ松に話すと、叫びながら妻が話しをしはじめた。