第10章 嫌われるのが怖いだけ
「もう引き上げようか。お腹空いたし。」
蛍がそう言うから
「うん!何食べたい?」
蛍に聞いてるのに
「ん~、由佳は何系がいいの?」
「ごはん!」
「ハイハイ」
蛍はいつもあたしを優先してくれる。
それは蛍の性格なのかもしれないけど
そんな事されると自分は特別になった気がしてきちゃうから…
「近くに評判がいい食堂があるけど?」
「食堂?!素敵!!そこ行く!!」
それから紙コップに入れていた貝を二人で
手洗い場で水洗いし、キッチンぺーパーにつつんだ。
食堂に着き、蛍は生姜焼き定食
あたしは、から揚げ定食を頼むと
蛍が小瓶を渡してきた。
綺麗な曲線のリボンのついた小瓶を見つめながら
「キレイ…。蛍はセンスがいいね。小瓶だけでもこんな素敵なモノ選べるんだもん!」
心からそう思った。
「…。褒めても何も出ないけど?」
ペーパーに包んでいた貝を二人で自分の小瓶に入れていった。
ふと、思いついた。
もしあたしがそばに居れなくなっても、
蛍のそばに居たって証拠が欲しかったから
「蛍!あたしの小瓶と蛍の小瓶交換しよう?」
「は?なんで、わざわざ色まで変えたのに交換しなきゃならないワケ?」
「そうか~…。そうだよね。じゃあ、あたしの小瓶、蛍が持っててよ」
じゃあ、蛍が忘れなければいいと思った。
あたしが少しの間でもそばに居たって。
「…だから、それじゃ意味無いって言ってるんだケド?そもそも、それを持って帰ると幸せになれるンデショ?」
蛍があたしの幸せだよ。
「だからだよ…。蛍が…あたしの幸せを持って帰って…蛍あたしの幸せ願ってよ…そうしたら…」
蛍の事ずっと好きでいられるって言おうとしたら
定食屋のおばさんが頼んだものを持ってきてくれた。