第9章 消え方と消し方と痛み
潔子さんみたいな人が好きな蛍は、
こんなこと位で泣く女の子なんて…
どっちにしろ眼中にはない事はわかってるけど…。
蛍は案外一途そうだから…。
無理だってわかっていても
好きな気持ちなんてそうなかなか無くならないし。
無理だってわかっていても
優しくされたらもしかしてって期待しちゃうし。
結局布団の中で涙はこぼれてしまっていた。
朝、食堂で朝食の支度をしていたら、蛍とあった。
おはよ。と笑顔を作って言ったけれど
蛍は訝しげな顔をして…
その顔が怖くて逃げるように厨房に入った。
いつも通り右側に蛍はいるけれど、
蛍はこっちを見ないし話しかけてもこない。
相当怒っているんだ…。どうしよう。
マネージャーの仕事中もずっと考えるのは蛍の事
あたしは潔子さんにはなれないから…
それでも蛍に笑って、
蛍の隣にいて、
蛍に名前を呼んでもらいたくて
でもやっぱり蛍に好きになってもらうのは無理みたいだね…。
あたしが努力する度悪い方に行ってる気さえする…。
時々優しい蛍はやっぱりあたしじゃなく
潔子さんを見ているのかもしれない。
蛍の瞳にいつも映っているのは
あたしを見ていても潔子さんなんだろう…。
泣きそうになるのを何度も堪えながら
それでも謝らなきゃいけないから…。
武田先生に許可をもらってケーキを買いに行った。
皆疲れているから糖分で疲れをとりましょう
なんて口実を使って。
蛍の好きなイチゴのケーキ一番大きなホールにしてもらって
チョコケーキも頼んで。