第8章 月が意地悪に笑う
「天才じゃないよ…。他の人よりボールに触る時間が長かっただけだよ。でね、ちょっと話ずれるけど、友達グループに彼氏ができた子がいたんだよ。すごくモテてイケメンで優しいって皆から言われる男の子でね。その子幸せそうで。みんなで良かったねって言いながらさ。それで、二学期になった時その友達の子の彼氏から告白されたの。あたしと付き合えるならその子と別れるって…。もちろん断って、グループでも特に仲がいい二人に相談したんだよ。それで、その子にはその事は黙っておこうってなって。でもその彼氏が友達に、あたしが誘惑してきたって言ったらしくてね…。グループ内で喧嘩になって…あたしそういうの苦手だったから一生懸命止めてたら、その子が【被害者ぶってないでよ!】ってあたしを突き飛ばしたんだよ。まぁ、相手からすればそう思うよね。でもさ、ケンカになってた場所が悪かったの。突き飛ばされた場所、階段の踊り場だったから…。そのまま階段から落ちてね。落ちた瞬間はよく覚えてないんだけど右肩から落ちたらしくて。手術して完治はしたんだ。日常生活、体育くらいの運動には支障はないけど、激しい運動、特に肩に強い負荷がかかる筋トレなんかはダメだって。それって本格的にはバレー出来ないって言われたって事なんだよね…。それからはさ、皆、仲が良かったグループの子達でさえも腫れ物に触れるようになって…。みんな可哀想に。ってそれもあってか母親が宮城の転勤、一応、栄転だしって言いながら、こっちに引っ越してきたの。あたしのために受け入れたんだと思う。だからあたしは友達も色々なこと捨ててきたの。まぁ、母親と会う時間がもっと減ったけど。蛍達と会ってる時間の方が圧倒的に多いと思うけどね…はい。おしまい!そんな昔話でした。」
「その事、知ってる人って他にいるの?」
「…ん。バレーの事は大地さんに話したよ。ケガしてバレーボール出来なくなった。だからバレーは嫌いって感じで。ここまで詳しくは話をしてないけど。そうしたらバレーまで嫌いにならなくていいんじゃないかって。だからマネすることにしたの!小さい頃の話は誰にも話したことないなぁ~。」
あの日大地さんにポロッと話した事はあって…それであたしは今ここにいられる。
大地さんに背中を押してもらえた。