第4章 侵略の音
最近やけにジョナサンの機嫌がいいと思っていたら、エリナという彼女(本人たちいわく友達)が出来たのが理由らしい。
確かにエリナは素直で可愛らしいし、お医者様の娘さんなだけあって私よりも女の子らしい立ち振舞だし。
その様子を見てディオは面白くなさそうな顔をしているけど。
君さ、色々と手を回してジョナサンをいじめるより、真っ向から喧嘩売ったほうが勝てるんじゃないかな?
なんか……憎らしい態度ばかりなディオを嫌いになれないのは、そんな抜けてる所があるからじゃないかな、と今日このごろ思う。
ばきーっ!という鋭い音で、意識を戻される。
……私がこうも諸々を考える事になった原因はというと。
「ディオォォオオーッ! 君がッ! 泣くまで! 殴るのをやめないッ!」
ジョナサンが、いつも穏やかな顔をしているジョナサンが。見たこともない怒りを露わにした形相でディオを殴り倒している。現在進行形で。
何がジョナサンの逆鱗に触れたのかわからない。よっぽどの事をディオがしたのか。
使用人に呼ばれて駆けつけた私には、さっぱり原因がわからない。
男同士、それもお互いボクシングやら格闘技系の経験者。骨と骨のぶつかりあう音が少し離れた場所にいる私にまで響いてくる。男の子の喧嘩なんて可愛いものじゃない。男と男のぶつかり合いなんて心中推し量れるわけでなないので、静観するしかない。
「このきたならしい阿呆がァーーーッ!!」
……はっ!? ディオが泣いてる! そんなに屈辱だったの!?
というか背中に隠してるのってナイフ! 拳同士ならまだいいけどナイフはまずいって!
「ふたりとも、いったい何事だ!」
慌てて2人の間に飛び込もうとした時、ナイスタイミングでお父様の怒号が館内に響き渡った。
「男子たるものケンカの一つもするだろう。しかしジョジョ今のは抵抗もできなくなったディオを一方的に殴っているように見えた! 紳士のすることではない!」
お父様はそのまま2人に自室謹慎を言いつけ、そのまま振り返る事なく踵を返す。私とすれ違う時に、ひっそりと視線を合わすのを忘れずに。