第4章 侵略の音
「はい、おーしまい!」
最後にぺちんと頬に貼り付けておしまい。
何かを考え込んでぼんやりしているディオが物珍しくて、頭をわしわしと撫で回してみる。
「何をする! 慰めのつもりか!?」
ビクッと身体を跳ねさせて撫で回す私の手を掴もうとするディオ。それを無視して、今度は優しく撫で方を変える。
「別にそういう訳じゃないけどさ。ディオ、私の事避けてるでしょ? 同じ家族なのに、大切な弟なのに……寂しいじゃない? それって」
ディオがどう思っていようと、私からすれば大切な家族で弟だ。ちょっとは仲良くなりたいのだ。
同じ家に暮らしていて、滅多に会話がないなんて寂しいじゃないか。
「仲良くしたいって、思ったらだめ?」
「……」
むすっとはするものの、ディオは何も言わなかった。掴まれていた手も、いつの間にか離されている。
文句を言われないのをいい事に、撫でるのを続ける。さらさらとした金色の髪は指通りが良くて心地が良い。
微妙な雰囲気の静寂の中、言うつもりがなかった言葉が漏れたのは、奇妙な空間の所為だと思いたい。
「仮に……ディオがうちの財産とか家督とか、諸々手に入れようとしてジョナサンをいびっててもさ」
「……お前」
明らかに動揺を露わにしているけど、まあ独り言みたいなものだから。
「私はお姉ちゃんだから。何をしようと、何をされようと。ディオとジョナサンを心から嫌いにはなれないと思う」
もう、普通の家族になれない事はわかりきっている。それは悲しい事だけど、無理やりつなぎ合わせたいとも思わない。
お父様も、ジョナサンも。根っからの善人だし紳士だから、ディオを疑ったり追い出したりは絶対にしないって言い切れる。
貴族として誰かを疑ったり、腹の探り合いをしないといけない時はあるけど、その時は私が補っていけばいい。出来ればそこに、ディオがいてくれたら嬉しいな。
「何があっても、私はお姉ちゃんだから。それは忘れないでほしいな」