第3章 新しい弟
外で馬車の音がする。
どうやらようやく彼が到着したみたいだ。
「姉さん! 行ってくる!」
「あ、ジョナサン!」
現金な物で、さっきまでのしょぼくれようは何処に行ったのか部屋を飛び出していく。一緒に愛犬のダニーを連れて。
……ダニー?
「まずい……! 犬苦手だったらどうするのよ……!」
慌ててジョナサンを追いかける。
身長はほぼ変わらなくなってしまったが、まだ私の方が足は早い。ドレスだけど構うものか!
執事とか侍女長に見られたらこの後はお説教が待っているんだろうなーとは頭をよぎったが、気にしている暇はないと裾をたくし上げる。
足首を出さないと走りづらいんだ。だからドレスはあんまり好きじゃないの!
遠目に太陽の光を浴びてキラキラと光る金髪が見えた。
そして彼に何かを話掛けるジョナサンの姿。
ジョナサンがダニーを呼んだ時、金髪の彼が一瞬顔をしかめたのが見て取れて、更にスピードをあげる。
「ダニーっ、待て!」
「わふ!?」
ダニーは賢い子だから、私の声に反応して金髪の彼に近づこうとしていた足を止めた。
「ジョナサン、だめでしょう! 彼が犬を苦手だったらどうするの。ダニーは身体が大きいんだから」
「ごめんなさい……」
第一声にジョナサンに軽く怒る。
犬が苦手だったら、私達の膝と同じ程の大きさがあるダニーは相当な恐怖な筈だから。
嫌な思いをさせたい訳じゃない。
「謝るのは私じゃないでしょう?」
ジョナサンの肩を押すと、躊躇いながら金髪の彼に謝った。一瞬躊躇った訳は、後で聞こう。
ゆっくりとした動作で裾を直し、金髪の彼に向き直る。
念入りに隠された、その瞳の中の強い光を見つめながら軽く微笑んで淑女の礼をとってみせた。
「初めまして。私はクロノ・ジョースター。ジョージ・ジョースターの長女よ。貴方の名前を教えてくれないかしら? 新しい弟くん?」