第3章 新しい弟
お父様の新しい息子が来る日だからか、屋敷はなんとなくばたばたしている。
どんな人が来るのかわくわくしている人もいれば、貧民街の出身だからと若干の嫌悪感を滲ませる人もいる。
それは普通の人には感じない程度のものだけれども。
そわそわしているといえば、それはお父様もジョナサンも同じ。
特にジョナサンは不安と期待が隠せないみたいで、さっきからずっとそわそわ落ち着かない。
「ジョナサン……そんなに落ち着きがないとお父様に怒られるわよ?」
「だって……姉さんは不安じゃないの?」
今にも部屋中を歩き出してしまいそうだったので声を掛けると、やや不満げに視線を向けられた。
「不安だろうがなんだろうが、家族になることには変わりないからね。まあ、あるとしたらちょっとの期待くらいかな?」
「……やっぱり姉さんは強いや。知らない子とこれから暮らすようになるから……僕は期待より不安の方が強いよ」
しょぼくれちゃった。
もう12歳だというのに、こういう所はまだ姉離れが出来ていないなぁと思う。私が嫁いだらどうなるんだろう、この子は。
その頭に垂れた子犬の耳が見えたような気がして、苦笑する。
「おいで、ジョナサン」
ぽんぽんと自分の座っているソファを叩く。
ジョナサンは素直に頷くと、おずおずと腰を降ろした。
私は身を乗り出して、愛しい弟の頭を抱きしめる。
幼い頃から続くジョナサンを宥める時の行動だ。
「大丈夫……大丈夫よ、ジョナサン。ジョナサンは優しい子だから。不安になったら、辛くなったら何時でも私の所へおいで。お姉ちゃんが守ってあげるから!」
「……うん、姉さん」
新しい家族が来るまで、あともうちょっと。