第2章 私の弟
遠くから、微かに自分の泣き声以外の声が聞こえてくる。
ジョナサンが、泣いている。
まるで母親がいなくなった事を分かっているかの様に、激しく泣いている。
「ジョナサンは……どこ?」
執事の顔を見ると、彼ははっとしたように身体を揺らした。
「別室にいらっしゃいます。そちらへ移動いたしますか?」
「…………」
本音を言えば、お母様の側にいたい。許されるなら、ずっと。
だけど……私はお姉ちゃんだから。お母様がいない分、私が守らなくちゃいけないから。
「あんないしてください。ジョナサンといっしょに、またここにきます」
「畏まりました」
痛々しそうに一瞬顔をしかめ、腰を折る。
その隠された拳が、小さく震えていたのを知っているのは、きっと私だけだ。