第2章 私の弟
ベッドの中を覗き込む。
つい先日生まれたばかりだと思っていたのに、もうしっかりと両目が開いている。
緑がかった深い青色の瞳は、お父様の色と同じだ。因みに私はお母様と同じである。
「ふ……ふぇ……」
思わず身体が跳ねる。
まじまじと見すぎたのか、ジョナサンがぐずり初めた。
お母様は疲れて別室で眠っている。この部屋にメイドさんはいない。いるのは私だけだ。
「な、なかないで……! どうすれば……!?」
赤ちゃんのお世話なんてしたことがないし!
手を伸ばしかけて、躊躇う。
こんな純粋な存在に、私なんかが触れていいのか。傷つけて仕舞わないか。
目の前で動きを止めた私の手を、ジョナサンがぐずりながら見つめて。
「……ジョナサン?」
「きゃっきゃっ!」
ぎゅうっと小さな手で私の指を握る。この子が生まれた時と同じように、強く、強く。
まるで触ってもいいよ、と言わんばかりの満面の笑みを浮かべて。
「…………っ」
震えるもう一方の手で、恐る恐るジョナサンの頭を撫でる。
ジョナサンは撫でられるのが嬉しいみたいで、更に笑顔を浮かべていて。そんなジョナサンを見ていると、胸の奥からぽかぽかとしたものが溢れてくる気がする。
「あったかいね……じょなさん」
涙が滲んだ声には、気が付かない振りをした。