第14章 ウィル・オブ・タイクーン
数日が経ち、港で豪華客船が沈没したと云うニュースが流れた。恐らく組合がポートマフィアからの攻撃を受けたのだろうか。
探偵社側には今の所戦争の被害は無い。拠点としている晩香堂内に残る守勢側である社長、乱歩、与謝野、賢治、茉莉は特にすることも無く、ただ監視映像を眺めたり、暇潰しの為に自分の趣味に興じたりしていた。室内ではパチン、パチン、と碁を打つ音が響く。
『晶子さん、監視映像に異常は無いですか』
「退屈な映像ばかりだねェ」
パチン、
「この講堂に侵入する為には、地下の廃路線を通る他ない。敵が侵入して来たとしても、路線内にある監視映像によって、事前にそれと知れる」
パチン、
「道中は罠も満載だしね」
『………ぅ』
会話途中で呻き声を上げる茉莉に賢治が声を掛ける。
「どうしました、茉莉さん?」
『…社長、参りました』
粘ってはいたが囲碁で敢え無く社長に完敗した。
「ぅむ、中々筋は良かったぞ」
「はっはっ、茉莉ちゃんも未だ未だだねぇ!
じゃあ与謝野さん、此れで花札でもしないかい」
「ほぉう、何を賭けるんだい」
目を光らせゲームを始めようとすると、乱歩の表情が変わる。
『乱歩さん、どうかしましたか?』
「…社長、攻勢を戻した方がいい」
「!敵か、襲撃規模は何人だ」
監視映像を除くと其処には、不敵に微笑むポートマフィア幹部・中原中也
「…一人だ」