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もう一人の女医 【文豪ストレイドッグス】

第14章 ウィル・オブ・タイクーン


ー太宰視点ー

Qが座敷牢から解き放たれ、私達を守る為に駅から遠ざけたのだとすれば、と思えば案の定。
敦君がQの詛を受け、到着して居た春野さんやナオミちゃんに手を掛けていた。
「止めるんだ敦君!良く見ろ!!」

「⁈…そんな、最初から僕だけだ操られて…
僕はただ…守ろうとして」
ハッとして少し正気を戻したのだろう、ナオミちゃんを離しブツブツと呟きながらその場に蹲る。長閑な田舎の駅に響く幼い子供の様な、不気味な笑い声。Qの人形を探していると遅れて来た茉莉が人形を見つける。

『治、椅子の下ッ』
「!消えろ、異能力 人間失格」

異能により詛の根源である人形が消え、敦君の体から詛受信者の印である手形の痣も消えた事を確認する。すると、背後に停車している列車乗車口から、私にとっては憎たらしい幼い声がした。

「太宰さんの新しいお友達、ずいぶん壊れやすいんだね。けどいいんだ、太宰さんを壊す楽しみが残ってるもの☆
僕を閉じ込めたお礼に、いっぱい苦しめて壊してあげるね」

Q、こと
夢野久作
ーー能力名「ドグラ・マグラ」

『…久作』
「次は封印などしない。心臓を刳り貫く」
「また遊ぼうね、茉莉さん、太宰さん」

Qを乗せた列車は発車し、やがて見えなくなる。何時迄も此処に居るわけにもいかない。
「行くよ、敦君」

私の声にも無反応で項垂れる敦君。茉莉が駆け寄っても反応がない。
『敦君、立てる?』
「駄目だ、僕は、居ちゃいけなかったんだッ」

このままでは埒があかない。と私は敦君を呼ぶと、彼の顔を上げさせ、その頰を引っ叩く。
『ちょッ、治何してるの⁈』
「敦君、偶には先輩らしく助言でもしよう。
自分を憐れむな、自分を憐れめば人生は終わりなき悪夢だよ」

「さぁ、そろそろ反撃といこう。
こちらも鬼札を切るよ」

ー太宰視点・終ー
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