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もう一人の女医 【文豪ストレイドッグス】

第13章 三社鼎立


探偵社・医務室

尾崎紅葉は目を覚ますと、微かに漂う薬品の香りと目前には見慣れぬ天井があった。あの後何があったのだろうかと辺りを見回す。
自分の寝かされ、拘束されている寝台の横に目をやると、懐かしい顔がそこにあった。

「やぁ、姐さん。ご無沙汰」
「…確かに久しいのう、裏切り者よ」

四年前にポートマフィアから突如姿を消した太宰治と、その奥には拐かされたと聞いていた荒木茉莉の姿があった。
太宰の隣に立っていた敦を見つけるなり紅葉が問う。
「童、鏡花は無事かえ」
「…彼女は、行方知れずだ。貴女の所為だ」

突然クツクツと笑い出す紅葉に対し、敦はフツフツと怒りが込み上げてくる。
「何が可笑しい!」

腕を異能で虎化させ紅葉に爪を立てようとするが太宰によって阻まれる。
「彼女は私に任せ給え」
「太宰さん⁈」
『大丈夫だから、敦君。少し席を外してくれるかな?』
「茉莉さん…」

二人に促され渋々医務室を後にする敦。
『却説、早速で悪いですけどポートマフィアの戦況と今後の作戦辺りから教えてくれますか?』
「ポートマフィアの掟を忘れたかえ、茉莉よ。江戸雀は最初に死ぬ」

素直に教えてくれるなんて思ってもない、想定内の回答だった。

「…姐さんの部下に拷問専門の班があったよね?偶に彼らが手こずる相手に、私が助太刀したとこがあった。私が訊いても口を閉ざした儘の捕虜が一人でも居たっけ?」
ガチャ、と太宰は鍵を閉め室内は三人だけになる。



「ーー此処からは、大人の時間だね」


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