第13章 三社鼎立
目の前に、悲痛な叫びを上げながら涙を流している人がいる。
《…君が、君がッ、君が産まれなければッ》
その人から涙が流れるたびに比例してか、自分の呼吸が苦しくなる。
あぁ、この人に首を絞められているのか…
…なんで絞められているんだっけ?
意識が掠れて目の前が真っ暗になった所で、また目を開くと、心配そうに此方を覗いている太宰の顔があった。
「茉莉、気がついたかい?随分と魘されていたのだよ」
『ッハァ…ごめん、起こしちゃった?』
「私は大丈夫だよ。それに、そろそろ起きても良い時間なのだしね」
ちらっと窓を見れば、確かに陽は登っていた。いつもなら私は既に起きている時間だ。むくりと起き上がるが、元々低血圧ではあるが、今日は寝覚めも悪いせいでどこのなく怠い。
ふと、「茉莉」と呼ばれたので彼の方へ振り返ると、フニャ、と口に口が軽く当たる。
『………』
「ふふふッ、茉莉と同棲したら毎朝こうするの夢だったのだよ、ね"ッ⁈⁉︎」
スパーンッと腕を振り上げ寝間着の袖を治の顔面に直撃させた。
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何時もの様にサボる気で居た太宰を引きずりながら探偵社へ向かう道すがらだった。
『そう言えば、今日だったよね?鏡花ちゃんの仕事初め』
「確か、敦くんと一緒だったかな。心配かい?」
『少し。マフィアが何時動くか解らないし、鏡花ちゃんの電話に着信があれば信号が出る様に改造したとは云え、彼女の異能が使われるか…』
そんな私の不安をよそに、自分の携帯電話が鳴る。国木田さんからだった。
《荒木か、其処に太宰も居るな⁉︎》
急ぎの用なのだろうか、と太宰にも聞こえる様に通話の音量を上げる。
「居るよ、何かあったのかい?」
《小娘の携帯電話に着信があった。お前達も山下公園の中央広場に向かってくれ》