第12章 たえまなく過去へ押し戻されながら 後編
大通りから一本入った脇道は、薄暗く、何処となく不気味な細道だ。
そんな細道を陽気な会話をしながら楽しそうに歩く中年男性と少女。
「ーー楽しいひと時だった。私も童心に返って、異能力で敵をバッサバサと遣っ付けたくなったよ」
「中年にはムリ」
「非道ぉい…私は之でもーー」
細道を抜けると建物の間にある開けた空間へと出る。
そこには黒いスーツを着たポートマフィアの構成員達。一般構成員に黒蜥蜴の面々、爆弾魔の梶井、幹部の中原が揃い、中央には血溜まりが広がり男が一人、目鼻や口から血を出し、関節はあり得ない方向を向いて倒れていた。
一般人が見れば卒倒する光景だ、見られたからにはマフィアは証拠隠滅を図る筈だ。
だが、彼が一般人であれば、の話だ。
構成員達は銃を向けるどころか、全員その場で跪き頭を垂れる。
「これが組合の刺客かね?」
「はい」
「探偵社に組合、我々も又困難な戦局と云う訳だ
ーー最適解が必要だね」
悠々と歩みながら中央で絶命している男を跨ぎ奥へと進む。無造作に流れていた自分の前髪を後ろへと撫で上げれば、最早冴えない町医者の面影は、そこには無かった。
ポートマフィア 首領
森鷗外
ーー能力名『ヰタ・セクスアリス」
「組合も、探偵社も、敵対者は徹底的に潰して殺す」