第11章 たえまなく過去へ押し戻されながら 前編
眠っていたのか気づけば既に丑の刻を過ぎていた。
「気がついたかい?」
『うん、滅茶苦茶怠いけど』
「それは何より^ ^」
こっちの気も知らないで良い笑顔で云いやがるなぁ…
本当、顔だけは良いんだから。
なんて事考えていると隣で体を起こしている彼からねぇと呼ばれ顔を向ける。
「この際だ、一緒に住もうよ」
『…何の脈絡もなく云うね。何で?』
先程の、と云うか日をまたいでいるから昨日、私が部屋から脱出している最中に地下牢で中也とあった会話を聞かされた。
自分が今住んでいる場所がマフィアの黒蜥蜴に見つかっていて見張られているとの事だ。
探偵社寮の方が安全なのではと云う事での提案だった。
『一理あるけど、別の部屋を借りれば良いんじゃ?』
「残念だけど此処の寮、空き部屋は無いよ」
『…じゃあ寮じゃ無くて、別の賃貸とか借りれば良いんじゃ』
「気になったのだけど、何故そこまで同棲を拒むのだい?地味に傷つくのだけど。それに、二年前、探偵社に入る時もかなり拒否していたよね?」
構ってもらえない仔犬の様な顔で此方を見てくる。
そういえば、そうでしたね、二年前もそんな事在りましたね…
「若しかして“自分の生きていることが、人に迷惑をかける。僕は余計者だ。”なんて未だ思っているのかい?
前にも云っただろう、“そう云う意識ほどつらい思いはこの世に無い”よ」
『昔よく読んでたね、その本。前向きな話の筈なのに、全然共感出来なかったっけ、あの時は…
わかった、いいよ』