第10章 在りし日の…
ポートマフィア本部・二階 通信保管所
元自分の部屋から脱出したのは良いが、治を探す前にひとつ、気になっていた所へ立ち寄った。
以前、芥川君が云っていた、敦君に70億もの懸賞金をかけた人物を調べるためだ。
機械を弄っていると、背後から人の気配が、それも段々近づいてくる。
触れられる直前の所で相手の腕を取り、後ろで捻りあげる、が…
「痛い痛い痛い痛い痛い痛いッッ!!私だよ茉莉ッ!」
『わぁ、ごめん、治だったんだ』
相手が誰だかわかった所ですぐに手を離す。
探していた太宰治その人だった。
「いててて…せっかく情緒的な再会にしようと思ったのに夢がないなぁ 茉莉は…」
『情緒的って、何しようとしてたの?』
「眠っている君を接吻して起こそうかと(笑」
『折角、私が助けようと思ってたのに…』
「君は何でそんなに男気があるんだか(苦笑
…敦君に懸賞金をかけた人物を調べていたのかい?」
『うん…と云うか、その傷どうしたの?』
「あぁ〜、久しぶりに中也に会って嫌がらせしてきた」
あぁ、納得した…
『程々にしてあげなよ?そろそろ中也の胃に穴が空いてもおかしくないよ』
と機械を弄りながら話を続けるが、
「本当に君は優しいね…
君に無理強いさせた相手に気を使えるなんてね」
太宰からの皮肉に一瞬、動きが止まる。
『…皮肉屋なのは昔から変わらないね、治は。別に私はあの件で怒ってはない、私だって悪かったんだ。中也にそこまで罪はない』
「………そっか、君がそう云うのなら私は何も云わない様にしよう。
所で、出たかい?」
『出たよ、敦君に懸賞金を掛けた人物………
ーー治、此れって』
「?……ッ此奴等は⁉︎」
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ヨコハマ港沖、敦と芥川による戦闘によって沈みかけたコンテナ船。よりもさらに沖に浮かぶ一艘の豪華なクルーズ船。遠くに見える湾岸都市・ヨコハマを眺めながら、時計を見る男が一人。
「…時間だ。島国の田舎マフィアめ、約束の時間も守れないとは、とんだはんちくだな。
まあいい、【約定の地】は我ら《組合》が必ず頂く」
能力者集団《組合》・団長
フランシス・F
ーー能力名「華麗なるフィッツジェラルド」