第10章 在りし日の…
「はあ⁉︎手前、巫山戯るのも……手紙?」
「手紙の内容はこうだ、
『太宰 死歿せしむる時、汝らの凡る秘匿公にならん』てね」
初めは分からなかったのか、理解した瞬間一気に顔色が変わり私から離れる中也。
それもそうだ、元幹部で裏切り者の私を捕縛した、だが上層部には、私が死んだら組織の秘密を全部バラす、という手紙がついてきた。
検事局に渡れば、マフィア幹部全員を百回は死刑に出来る、幹部会を開くには十分すぎるくらいの脅しだ。
「そんな脅しに日和るほどマフィアは温くねぇ、手前は死ぬ、死刑だ」
「だろうね、けどそれは幹部会の決定事項だ。
決定より前に私を勝手に私刑にかけたら独断行動で背信問題になる、罷免か、最悪処刑だ」
「そして、俺が諸々の柵を振り切って手前を殺したとしても、手前は死ねて喜ぶだけ」
「ってことでやりたきゃどうぞ(笑」
「………ッ(怒」
中也が握っていたナイフがカランと床に捨てられる。
「何だ、やめるの?私の所為で組織を追われる中也、ってのも素敵だったのに (笑」
「…真逆、って事は、二番目の目的は俺に今の最悪な選択をさせる事?」
「そ、久しぶりの再会なんだ。このくらいの仕込みは当然だよ」
「死なす…絶対こいつ、いつか死なす」
「所で、鎖を壊して私を解放したのは君だよね、私がこのまま逃げたら君が逃亡幇助の疑いをかけられるよ?君が云うことを聞くなら、探偵社の誰かが助けに来た風に偽装してもいい」
「……それを信じろってのか」
「私はこういう取引では嘘はつかない、知ってると思うけど」
「チッ…人虎がどうとかの話なら芥川がしきってた、二階の通信保管所に記録が残ってる筈だ」
と云いながら、戦意を喪失した中也は自分の外套を拾い、部屋を去ろうとする。