第10章 在りし日の…
ー太宰目線ー
中也とは長い付き合いだ、だから手筋も間合いも動きの癖も、完全に把握している。
だが、私の格闘術はマフィアでも中堅以下だ。
マフィアきっての体術使いである彼には到底勝てるわけも無い。
おかげで吐血する位の威力で殴られる。
「動きが読める程度で勝てる相手と思ったか?」
私の首を掴みながら、自前のナイフを充てがう中也。
「終いだ、最後に教えろ。態と捕まったのは何故だ、獄舎で何を待っていた」
「…………」
そんな質問を投げかけてくる中也、だがふと、中也から微かに香る香りに違和感を覚えたが、すぐに解った。
この香りは、茉莉の香りだ。
何故、中也から?
まぁ、其れは後で中也に答えてもらうとしよう。
「……一番は、敦君についてだ」
「敦?」
「君達がご執心の人虎さ、彼の為に70億の賞典を懸けた尾大尽が誰なのか知りたくてね」
「泣かせる話じゃねえか…と云いたいが、結果がこの態じゃあな、麒麟も老いぬれば駑馬に劣るってか?【歴代最年少幹部】さんよ。
ま、運にも見放されたな。俺が西方の小競り合いの鎮圧して半年ぶりに帰ったその日に捕縛されんだからな」
「いいことを教えよう。明日【五大幹部会】がある、理由は私が先日組織上層部にある手紙を送ったからだ。
で、予告するんだけど…
ーー君は私を殺さない、どころか懸賞金の払い主に関する情報の在処を私に教えた上でこの部屋を出て行く、それも内股歩きのお嬢様口調でね」