第10章 在りし日の…
芥川が部屋を出て数時間は立った。
(いい加減此処を出て、茉莉に会いたいなぁ
予想通りなら、今頃彼方も……)
太宰はふと繋がれていた手枷を見る。
「……頃合いかな」
すると、部屋の入り口から粗野な口調で、声が聞こえて来た。
「相変わらず悪巧みかァ、太宰!」
「……その声は」
心底嫌そうな顔をしながら声する入り口に目を向ける。
「こりゃ最高の眺めだ、百億の名画にも勝るぜ」
ポートマフィア幹部
中原中也
ーー能力名「汚れつちまつた悲しみに」
が、室内に入ってくる。
「最悪、うわっ最悪」
「良い反応してくれるじゃないか、嬉しくて縊り殺したくなる」
段々と太宰に近づいてくる中原だが、太宰の頭は中原が近づくにつれて、下へと下がって行く。
「……相変わらず身長変わらないね、中也」
「あ"ぁ⁉︎(怒」
「前から気になっていたのだけれど、その恥ずかしい帽子は何処で購うの?」
「云ってろ放浪者、いい年こいてまだ自殺が如何とか云ってんだろ、どうせ」
「うん」と即答で返す太宰。
「否定する気配くらい見せろよ……
だが今や手前は悲しき虜囚、泣けるなァ太宰。
否 それを通り越して、少し怪しいぜ。丁稚の芥川は騙せても俺は騙せねェ、何しろ俺は手前の元相棒だからな……何をする積りだ?」
やれやれ、と云った顔で太宰は繋がれてる両手をフラフラさせ、ジャラリと鎖を鳴らす。
「何って…見たままだよ、捕まって処刑待ち」
「あの太宰が不運と過怠で捕まる筈がねぇ、
そんな愚図なら俺がとっくに殺してる」
「考えすぎだよ、所で何しに来たの?態々私と漫談する為じゃないでしょ?」
「嫌がらせだよ」
中原の蹴り上げられた足が太宰の頭上を通ると、壁が減り込み、繋がれていた鎖さえを断ち切った。
「手前が何をたくらんでいるか知らねぇが、これで計画は崩れたぜ。俺と戦え、太宰。手前の腹の計画ごと叩き潰してやる」
挑発する中原に対して太宰は一声掛け指を鳴らすと、手についていた枷が外れる。
手に持っていたヘアピンで素手に枷の鍵を開けていたのだ。
「君が私の計画を阻止?……冗談だろ?」
「何時でも逃げられたって訳か…
良い展開になって来たじゃねえか!」