第2章 人生万事塞翁が虎
夕方の電話から数時間が立ち、漸く街に入り辺りもだいぶ暗くなり始めた頃だった。
再び同僚の国木田さんから電話が来た。
『はい、国木田さん。治見つかりましたか?』
《あぁ、見つかった。
見たかったのだが、もう一つ頼まれてくれないか?》
『良いですけど、仕事ですか?
確か、虎探しでしたよね?』
《そうだ、太宰からのメモでは「十五番街の西倉庫に虎が出る」だそうだ》
十五番街の西倉庫、近いな
『わかった、近いからすぐ行きます』
《何度も済まんな、頼む》
携帯をしまいながら少し急ぎ足で指定場所へ向かう。
夜は嫌いだ、昔を思い出す