第8章 人を殺して死ねよとて
その後、探偵社を出てフラフラとしながら元町方面へ太宰を探しに行ったが見つかるわけもなく、また探偵社へと帰ろうと電車に乗っている時だった。
何ともふざけた態度で「物理学実験」などと電車内アナウンスが流れたと思ったら、前方車両が爆発した。
《今ので2,3人は死んだかなぁ〜?でも次はこんなモンじゃありません!皆様が月まで飛べる量の爆弾が先頭と最後尾に仕掛けられておりまぁす!》
私が乗っているのは3両目、先に先頭車両にいるはずの実行犯の方に行くかと座席を立つと次のアナウンスが流れる。
《さてさて、被験者代表・敦くん!君が首を差し出さないと、乗客全員天国に行っちゃうぞぉ〜〜?》
……え、敦くん、乗ってんの⁈
後ろから聴きなれたハイヒールの足音が聞こえ、振り向くと与謝野が歩いてきた。
「おや、茉莉じゃないかい?何してんだい、こんなトコで」
『一緒の電車に乗り合わせてたみたいですね、晶子さん。
先頭車両に向かうんですか?』
「あぁ、後部には敦が行ってる
茉莉、アンタは怪我人の応急処置を頼む、爆弾魔は妾に任せな、応急処置が終ったらすぐ後部へ向かうんだ、いいね」
『了解です』
晶子さんと別れ応急処置をし始めたてすぐ、また先頭で爆発が起きた。
煙が晴れると、少々ふらついている晶子さんの向こうで、白衣を着て奇抜な格好をしている男
ポートマフィア構成員
梶井基次郎
ーー能力名「檸檬爆弾」
が立っていた。
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一方
後部車両へ向かっている敦。
ふと後ろから赤い着物を着た少女が飛び出し、敦の前を走って行く。
「君!危ないよ!
そっちには爆弾がーーー」
少女が立ち止まると首から下げていた携帯電話を耳に当てる。
《お前の任務は爆弾の死守だ》
携帯電話からの音声が聞こえてすぐ。
物凄い勢いで何かが自分の脇腹に刺さる。
痛みに耐えながら目の前の少女を見ると、背後には刀を構えた彼女の異能が、一人の夜叉がいた。
《邪魔者は殺せ、『夜叉白雪』!》
少女
ポートマフィア暗殺者
泉鏡花
ーー能力名「夜叉白雪」
は、ただ無感情な瞳で目の前の自分を見つめていた。