第7章 Murder of D Street 後編
一通り事情聴取も終わった夕暮れ。
亡くなられた山際さんの御遺体も綺麗にして後は送り出すだけにし、私の仕事は終わった。
警察署の前にはすでに三人が居た。
『待たせてしまってごめんなさいね』
「然程待っていないから大丈夫だよ、お疲れ茉莉」
「茉莉ちゃんの仕事も終わったことだし、探偵社に帰ろうか」
帰り道、敦君と治の会話を聞きながら先程の事件を思い返す。
亡くなった山際には交際相手はいないと云う話だったが、彼女の腕時計は海外銘柄もので、独り身の女性が自分用に買う品ではない。
そして見覚えがあった杉本の腕時計も同じ機種の紳士用の物だった。
「じゃあ、あの二人は」
「うん、二人は恋人同士だったのだよ
職場にも秘密のね」
『だから彼は彼女の顔を蹴り砕けなかったんだね、マフィアの仕業に見せかけられないと判っていても』
「能力者じゃないのに凄いですね、乱歩さんは」
すると少し前方を歩いていた乱歩さんが振り返る。
「茉莉ちゃーん、君が居ないと帰り道わからないでしょー!」
『乱歩さん、治や敦君も居ますよ?』
「いいじゃないか、其れに昼頃にも云っただろ?太宰が居ないんだから今日くらいは独り占めさせてよね(笑」
と私の手を握りながら再び歩みを進める。
そう云えば云ってましたね、行きの電車の中で。と思って居ると後ろから太宰の視線が背中に刺さる。
「…ちょっと乱歩さん、本人が居る目の前で何云ってるんです?」
「あー、太宰いたの?(笑」
「後茉莉も、何故されるがままで手を握られているのかな?」
『んー…まぁ、今日くらい良いかなぁと思って』
「いつも私とは手を繋がないのに、今日に限って何故だいッ⁈」
歩きながら大の大人が騒いで居るとふと
「あの薄々気になっていたんですけど、太宰さんと茉莉さんって、どう云う関係で?」
…
少しの沈黙の後、乱歩さんは何処か呆れた感じで
「え、見てて判らないの?君も探偵の端くれなら此れくらいは判らないと
二人は付き合ってるんだよ」
数秒後敦の奇声が響く。