第5章 運命論者の悲み
能力のおかげなのか敦は殆ど怪我は無かった。
重症である谷崎兄妹を与謝野に任せ治療室を出る。
心の中で、特に谷崎兄の潤一郎の方に合掌する。
(谷崎くん、御愁傷様…)
医務室ではちょうど、敦が目を覚ました所だった。
「ここは……僕、マフィアに襲われてそれから……」
「気づいたか、全くこの忙しい時に…」
『目が覚めたみたいだね、具合は如何かな』
「国木田さん、茉莉さん……
そうだ、谷崎さんにナオミさんは⁉︎」
『無事だよ、今隣で与謝野先生が治療中だy「ギャァァァアァァアッ‼︎………あッ❤︎」……』
「……治療中?」
『そ、治療中』
「聞いたぞ小僧、七十億の懸賞金だと?出世したな、マフィアが血眼になるわけだ」
「そうです!どどどうしよう、マフィアが探偵社に押寄せてくるかもッ‼︎」
焦る敦に対して国木田さんはしれっとしている、が
「狼狽えるな、確かにマフィアの暴力はかれつを極める、だが動揺するな
動揺は達人をも殺す、師匠の教えだ」
彼の手元の手帳が逆さになっているのを見る限り相当焦っているのが目に見える。
「奴らは直ぐに来るぞ、お前が招き入れた事態だ、自分で出来る事を考えておけ」
そう告げると医務室を出ようとした国木田だ
が、ふと振り返る。
「ところで小僧、荒木
先刻から探しているんだが眼鏡を知らんか?」
『国木田さん、ずっと頭の上に掛かってますよ』
国木田さんが医務室を出ていったが、敦は未だ浮かない顔をしていた。
『敦君、国木田さんはああ言ってたけど 自分のせいだって思い詰めてはいけないよ、敦君は何も悪く無いんだから』
「茉莉さん……」