第4章 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス
『…あ、そうだその前に』
ふと思い出し、去ろうとしていた樋口を呼び止めた。
『樋口さん、顔を上に上げて貰っても良いかな?』
「…え?なんですか、急に」
『良いから上げなさい』
有無言わさず顔を上げさせると首元に絆創膏を貼る。
『脅しとはいえ、少しメスで切れてしまったから、ごめんなさいね』
「は、はい ありがとうございます?(…何なんだこの人)」
『それから芥川君』
樋口よりも先に歩いていた芥川に懐から袋を取り出し、放る。
「……何のつもりですか」
『咳、前より酷くなってるから一応飲みなさい。気休めにはなるからーー元主治医からの忠告』
***
二人が去った後
『よし 谷崎君とナオミちゃんの止血は済んだから、敦君と谷崎君運んでくれる?』
「それはいいけど、茉莉 一つ聞いても良いかい?」
『何?患者いるんだから早くしてよ』
「芥川君に何を渡したんだい?」
『あぁ、薬だよ。途中で治療放棄した様なものだから、いつか会ったら渡そうと思ってずっと持ってたの』
「それは…半分私の責任でもあるね(苦笑」
『そうだね、何処かの誰かさんが誘拐も同然で連れ出したりしたからねぇ』