第1章 出会い×別れ
わたしは、バカなのだろうか……。
途中までは、真新しい、ツンツン頭の子くらいの足の大きさのものをたどって来れたけれど…。当然、彼が1番最後にその道を走ってきたわけじゃない。その上を通ってきた人だっているわけで……。
足跡は、色々な方向へ向いていた。
セレナ
「はぁ……こんなところで詰むなんて思ってなかったよほんと……。これ、疲れるからヤなんだけどなぁ……"円" 展開しましょうかネ……」
この世界にいる全ての生物には、生命エネルギー・『オーラ』というものを纏っている。それを使いこなす力のことを『念』と言い『円』というのはその念能力の技の1つ。円はオーラの覆っている範囲を広げて、それに触れたモノの位置や形状を肌で感じることができる。
セレナ
「とりあえず、50メートルくらいでいい、かな?」
スーッ、と息を大きく吸って、静かに吐き出しながら瞳を閉じる。悲鳴がどんどん遠のいていく。
ズズッ……
セレナを中心に半径約50メートルの円が展開される。そのオーラに触れた者のほとんどが、背筋を凍らせた。
ヒソカ
「……♥︎」
スッ、と瞳を開く。
セレナ
「……いた。28メートル先、2時の方向。」
できる限り速く走る。景色が線となって通り過ぎていく。風を切っていく。久しぶりの感覚だった。
セレナ
「あはっ、すっごくきもちいい…!!」
前髪が後ろへ流れておでこ丸出しでも構わなかった。ぬかるみを勢いよく蹴って、脚が、飛んだ泥で汚れたって、構わず走った。
すぐに試験官を筆頭とした塊に追いついた。少しスピードを緩める。そして、ソッと紛れ込んで、さも先程から一緒になって走っている風に装った。
セレナ
「ふぅー……」
ひと息、ついたのがいけなかった。
「うおっ?!おまえ、どっから湧いてきた?!」
セレナが紛れた隣には先程のツンツン頭の子と同じくらいの背丈で、頭はふさふさ、声音から男の子、がいた。目の前を走る人の影すらモヤがかって見えていたのだ、隣の人もハッキリ見えるわけじゃなかった。
セレナ
(迂闊だったなぁ……)
「ちょっと最後尾にいたからね、さすがに身の危機を感じまして、前に来た次第でございまする」
頭ふさふさの子
「そうか、まぁ、ここなら試験官の真後ろだからな。安全かもね」