第2章 暴走×逃走
『………』
だれかが、何か言ってる…。
『…………』
なんだろう、きこえない。きこえないよ…。
けど、ごめんね、いま、とっても、ねむたくって…。
『…………セレナ』
よば、れた?だれ、?だれ、なの…?
『……………セレナ……セレナ』
おかあ、さん?
『おきなさい、セレナ。おとうさんが呼んでいるわ』
おとうさん、が?
『おはようセレナ、さあ、朝稽古の時間だ』
あ、れ?お城……?わたし、なんで…?たしか…
『はやくしなさいセレナ』
『そうよセレナ』
おとうさん?おかあさん?
あ、れ…?あたまが……
『『はやく、はやく…ハヤク…ハヤクハヤクハヤクハヤク』』
!?
あ、あ、あァ………
『ナニシテルノ、セレナ、ハヤクシナサイ』
『ソウヨ、ハヤク、ハヤク』
おねがい、やめて…おとうさん、おかあさん…!
ドクン
突然左上腕の紋様が熱を帯びる。
激しい痛みと共に襲い掛かるのは、とてつもない睡魔。
寝てはいけない。
次第に黒い魔力が漏れ出す。
セレナ
「なに、これ…」
ガンガンとした頭痛に襲われながら、霞む目で自身の体から迸るソレを見る。
おかしい。
黒い魔力なんて、黒魔術じゃなきゃ…
そもそも、黒魔術どころか、わたしにはそもそも、術を掛ける演算すら…知らないはずなのに。
『さア、セレナ、イイコダカラ、ソレで、わたしのカラダを…ァァ、疼くの…!傷口がァァア』
『さア、セレナ、イイコダカラ、オトウサンを、ナオシナサイ…コロシチャダメダよ』
なに、なんなの?!
やめて、やめて!!!
セレナ
「いやぁあああああ!!!!」
肩で息をしながら、飛び起きた。
周りはシンとした薄暗い広場。傍らには、見慣れない女性が倒れ込んでいた。
少しだけ、腐敗臭がしていた。
ひどい汗に、動悸が激しい。
さっきのものが、夢であったことに、ほっと胸をなでおろす。
セレナ
「ハァ、ハァ……そういえば、ここ…わたし、あれ?」
なにをしていたのか思い出せない。
ハンター試験を受けにきていて、それで…
この塔に、きて…?
あれ、?
ダメだ、なんにも思い出せない…。
この塔に来たところまでは思い出せるのに……。