第2章 暴走×逃走
果たしてわたしは時間に間に合った。
着いた部屋も先ほどと同じくらいの広さで、同じ景色が流れるからグルグルとループしてきたのではないかと錯覚してしまう。
が、違うところが1つだけあった。
次の部屋へ続くであろう扉が2つあったことだ。
そこへ、タイミングよく男の声が聞こえてくる。
謎の男
「さて、ここからは君に取捨選択をしてもらう。なに、カンタンナコトだ。やってみればわかるだろう。全て5秒以内で答えろ。では、健闘を祈る」
セレナ
「勝手に出てきて勝手にどっかいったんだけど…」
程なくして2つの扉の間にある天秤を持った女の人の像から音声が流れてきた。
『問題。母親と父親、殺すならどっち?』
セレナ
「なっ……そんなの、決められるわけないじゃない!!!」
ふざけた問題だ、どうかしてる。
そうは思っても5秒以内に回答、つまり扉を開けて進まないとまた途方も無い時間を1人で過ごすことになる。それだけはごめんだ。
ドクンドクン……と、血管が波打つのがわかった。
自然と脳内には7年前の光景がフラッシュバックされる。
セレナ
「そんなの、そんなの……」
血みどろの母親と、その傍で嘲笑う男。
周囲からも悲鳴は鳴り響き、血の匂いが漂う。
いくつもの魔法陣がひしめき、その度に黒と紫の光が覆っていく。
父親の叫び声。
それと同時に、わたしの慟哭––––。
やはり、わたしにこれは難題すぎるように思われた。
セレナ
「殺すならって……そもそももう……」
扉の上には電光掲示板、女神像の上にも電光掲示板があり、数字がカウントダウンを始めていた。
残り、2秒。
扉を見据えた。母と父の文字。
セレナ
「もしも……あの時わたしが抑えられていたら…きっとお父さんも悲しまずに済んだはず……。なら、わたしは……」
意を決して一歩踏み出す。
残り1秒。
済んでのところで、わたしは母の扉を開けはなち飛び込んだ。
扉の向こうは、今まで通り、通路になっており、わたしは何も考えまいと進んだ。
やがて間も無く、行き着いた先は広い空間。
先の囚人たちと乱闘した部屋と同じくらいの広さだ。
そこに、ぼんやりと、浮かび上がっているのは……
セレナ
「う、そ……おかあ、さん……?」