第2章 君に咲く痕【家康・裏あり】
日当たりの良い部屋は、ほのかに薬草などの特徴的な香りが漂う。
「ふふっ、なんかこの部屋はなんか落ち着くね。保健室みたい」
腕の傷跡を調べられながら、花蓮はのんきそうに笑う。
安土城には、傷に効く軟膏がないのを知っていたから、結局花蓮を自分の御殿へと連れてきた。
数ヶ月前、初めてここに来たときは、緊張のせいか部屋の隅で縮こまってた花蓮も、もう慣れたのかくつろいだ様子でされるがままになっている。
「ほけん、しつ?」
「うーんとね、今でいう足利学校みたいなところに、薬とか布団を置いた部屋があってね、怪我したり具合が悪くなったらそこで看てもらうんだよっ」
ちらりと目線を花蓮に向けると、
「家康は、保健室の先生みたいだね」
柔らかな笑顔を向けられて、頬が熱くなるのを隠すように視線を腕へと戻す。
捲られた着物の袖からは、華奢で色白な花蓮の腕が覗く。
しかしそこには、赤い傷跡が孤を描くようにくっきりと残っている...。
そして、それはどう見ても、誰かの…
(…歯形?)
「あんた、何したらこんな傷作れるの?」
ちょっと滲みるよ、
と一言断りを入れて、酒を含ませた布で優しく傷跡をなぞる。
思いのほか、刺激が強いのか
「…っッ! これは、政宗と......んっ!」
言葉が詰まる。
(政宗と...脱走した照月を追いかけた時に、照月に噛まれちゃったんだけど…)
花蓮が元いた時代のように消毒液もないこの時代、度数の強い消毒用の酒はピリピリと肌を刺すように刺激した。
真っ赤になって痛みをこらえ、下唇を噛む花蓮の瞳に涙がたまってくる。
だけど...