第1章 【家康】私の知らない君と、俺の知らない君
深い森の中を馬で駆けながら
びゅんびゅんと風を切る音を肌に感じる。
(…こ、怖いっ!)
ぎゅっと腰に回した腕に力を込めると…
「…お願いだから、手綱握りるふりだけでもしてくれない」
と、腕の中の花蓮(家康)が
見上げながら睨んでくる。
「だ、だって…」
「だってじゃない」
「俺が女に手綱を握らせて、その腰に真っ青な顔でしがみついてるなんて…他の奴らに見られたら徳川の名折れでしょ」
「……っ」
不機嫌のそうな声に、胸がチクリと痛む。
入れ替わりなんて…
こんな事にならなければ…
そう思う以上に、家康の足手まといに
なっている事が苦しくなる。
いつも、家康の助けになりたいと思っているけど…
満足に馬にも乗れず…
家康の代わりに務めを果たすこともできず…
織田軍の中の、家康の立場も…
家康が背負っているものも…
私が簡単に手助けしたい
なんて言えるものじゃなくて
もっともっと大きくて…
「ごめんなさい…」