第21章 書き換えられる記憶
名取が帰ってくると、食事に行こうと誘われ近くのカフェへ向かった。
「それで?」
注文を済ませ、先に口を開いたのは名取だった。
「え?」
「え?じゃないよ。なんで河原で泣いてたの?」
「あー…、えっと…」
「私には話せない?」
「いえ、そういう訳では…」
果たして話してもいいものなのだろうか。
これは私自身の問題だ。名取を巻き込むべきではないのでは?それになにより、あの時的場が会っていた人物が誰なのかすら判明していないのに。
「…名取の坊ちゃんは―――――」
「だからその呼び方…、ねぇ妖姫。私のことは周一って呼んでくれないかな?」
何故?と小首を傾げると、名取は苦笑混じりにその理由を述べた。
「その呼び方だと祓い屋の名取って即バレするだろう?それに、妖のことを知らない一般人からしたらその呼び方は違和感があるものなんだよ」
「そういうもんか」
「そういうもんだよ」
「じゃあ周一」
(いきなり呼び捨てか…)
まぁ、口の利き方がなっていないことは今に始まったことではないので指摘しないでおこう。これもそれだけ親しいと思ってもらえてるとして、名取はの話に耳を傾けることにした。
「周一は…恋人が…その、他の人とキ…、親しくしているところを見たらどう思う?」
「…え?」
的場と何かあったのだろうとは思ったが、まさかの想定外の内容だったことに呆けた反応をしてしまった。
「だ、だから…!恋人が他の人と親しくしているところを見たらどう思うかって…」
まさか的場が…?いや、彼女を幼い頃からずっと大切にしてきていた的場が浮気などするのだろうか?
「周一…?」
「あ、ああ。そうだな、やっぱりいい気はしないかな。束縛する気は無いけれど、好きな相手だからこそ不安に感じてしまうと思う」
「そう、だよな…」
そう俯き加減にポソリと呟く。的場が浮気だなんて信じられないが、もしかしたら彼女はそう思える現場を見かけてしまったのかもしれない。