第20章 出会いの記憶
「!何だと!?まぁまぁってどういう意味だ」
「ああこらケンカはやめなさい!!」
「じゃあ僕達はこれで、七瀬さんを待たせてあるので。では」
「タクマまたな!」
的場を小走りに追いかけ、そして再び手を繋いで歩いていった。
「…何だあいつら」
「的場一門の御曹司とその式神だよ」
「――――的場一門…ですか?」
「的場は祓い屋の中で地位も実力もトップクラスの一族だ。祓い屋大家十一家をまとめたのもあそこだ。妖姫は静司くんが連れてきた半妖の女の子なんだ」
「半妖?」
「なんでも、とある森で妖と人間から迫害されていた所を連れ出したそうなんだ。彼女の両親は既に他界していたみたいでね。母親が妖で父親が陰陽師だったらしい」
妖と人間、双方から忌み嫌われていた少女。彼女は当時何を思っていたのだろうか。
両親もおらず、頼れる存在のいなかったであろう環境で。
(あの子は何故静司について行ったんだろうか)
仲良さげな後ろ姿を見るに、脅されているわけではなさそうだ。
妖姫に興味を持ったのはそれからだった。
「この子と的場との間にはなにかしらの約束があるらしいけど内容は妖姫も的場も明かすことは無かった」
妖姫の本当の名前も知らぬまま。いつしか私は妖姫に対して恋慕に近しい感情を抱いていた。
「妖姫にとって的場静司という人間は光に等しい存在なのかもしれない。でも、私からしたら的場の元に置いておくのは心配なんだ」
利用するだけ利用して捨てられそうで。
こんな年端もいかぬ少女にそれは酷だろう。この位の歳の頃ならば、友人と遊びに行ったりオシャレに興味を持ったりと色々したいこと・やってみたいことはあるはずだ。
しかし、現に彼女はそういったことに興味を示しているような感じは見受けられない。妖姫は的場の元にいるべきではないのでは?そんな思いがよぎる。
「まぁ、よく寝ているし今はそっとしておいてあげよう。きっと精神的に良くないことがあったんだろう」
「承知しました」
そして名取は柔らかなブランケットを掛けてやり、彼もまた仮眠をとることにした。