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的場一門の妖姫

第20章 出会いの記憶


名取が住むマンションにつき、少し赤く腫れた目元を冷たいタオルで冷やしているうちに、は疲れていたのか静かな寝息を立てていた。
「主様」
「ん?どうした柊」
「よろしかったのですか?こうして彼女を連れてきて」
「…本当はこんな形で連れてくるつもりではなかったんだけどね。この子のあんな傷ついた顔みたら、あのまま帰すわけにもいかないよ」
ソファで眠るを見つめ、名取は徐にの頭を優しく撫でた。
「…この子とは、まだ私が高校生だった頃に出会ったんだ」
それは名取が初めて祓い屋の会合に行った日のこと。その日は、的場静司と初めてあった日でもあった。
的場に手を引かれて連れられていた少女。それが「妖姫」だった。
「おれは…名取だ。名取周一、妖について知りたくて来た。お前は」
「へぇ「名取」か…。――――静司、でいいよ周一さん。おれはね 使えるものを探しに来た」
そう言った的場の言葉に反応したのはまだ幼さの残る女の子の声だった。
「なんだ主。私だけでは不満か」
「そういう訳じゃない。お前はお気に入りだからだよ」
「その子は…」
「ああ、紹介するよ。この子は妖姫、おれのお気に入りの式でね。半妖なんだ」
的場の肘辺りまでしかない狐面をつけた少女は、彼に手を繋がれてついてきていたようだ。こちらを一瞥すると的場の背に隠れてしまった。
「――――周一さん。ほら、あの木の上。着物が引っかかってるのは見える?あれ、何色?」
「――――濃い赤だ」
そう答えると、的場と妖姫はそれぞれへぇ、まぁまぁだな、と言った。何なのかと聞こうとした時、タクマという初老の祓い屋と出会った。
「こら!静司くん、子供がこんな所に来るんじゃないと言っているだろう」
「タクマさん。今回は一門の言いつけもあるんですよ」
「タクマ!」
繋がれていた手をぱっと離してタクマさんに抱きつく姿は、彼にはよく懐いている印象を受けた。
「妖姫ちゃんまで…。的場さんはまた…、ん?彼は?お友達かい?」
「いえ。でも彼、まぁまぁですよ」
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