第18章 色褪せぬ想いは大空へ消えゆく
「待ってよ!そんなことしたらカヅチが…っ」
「良いのだ。もう良いのだよ」
だんだんと視界が滲んでくる。嗚呼、こんな所で泣くつもりなんてなかったのに。
「その腕輪に込めたのは"雷"(イカヅチ)と"剣"(ツルギ)を操る力じゃ。…これで本当にタケミカヅチの血は絶えてしまうが、我らが力をお主が受け継いでいってほしい」
「なんでよっ!これは…この力は…っ貴方が受け継いでゆくべきものじゃない!」
「すまないな妖の姫君よ」
そしてカヅチが天を仰ぎ、両手を広げると光の粒たちは一層空へ登る速度を速めた。
「カヅチっ!」
『よせ主!お前まで"持っていかれる"ぞ!!』
「離して紅月!」
『今のお前には大切なものがあるだろう!それを今簡単に捨てる気か!』
いくつもの雫が頬を伝い、視界は滲んだままで必死に消えゆこうとする幻に手を伸ばす。
「本当はな、最初から解っていたのだよ。お主がヒナギクとは別人なのだと。それでも一時の気を紛らわせるためにお主をヒナギクと呼んだ」
初めて出会った時、カヅチは私をヒナギクと呼んでいた。私自身最初は微妙だったものの、いつしかこの子がそうしたいならと受け入れていた。
「まぁ、そう引き留めてくれるな。我は天へ登ればヒナギクに会えるとわかっただけで満足なのだ。散々付き合わせてしまって悪かったな」
「カヅチ…、私も貴方に出会えて良かったと思う!1週間程度だったけど、貴方と過ごした時間は楽しかった!」
「それはよかった。…さて、そろそろ時間だな。さらばだ人と妖の子よ。天から見守っておるぞ」
そして光の粒たちは全て天へと登りきり、カヅチの姿も完全に消えていた。の手に黄色のブレスレットを残して。