第16章 御槌(ミヅチ)の大妖
学校に着き、荷物を置いてから再び資材庫に足を運んでいた。
「主よ、どうかしたのか?」
「うん。封印解かれてないかなって思って」
「そうか」
壺は触らずに特に変わった所はないことを確認して離れようとした時。
―――――ピシッ
それは確かに、亀裂が入る音だった。
反応が遅れた、そう思った時には既に遅く。結界はあっという間にバリンッ!と破られ、骨壷の封印の札を引きちぎって中から何かが飛び出してきた。
「ヒナギクっ!」
「わっ!」
飛び出してきた何かを受け止めきれず、後方へ尻もちをついてしまった。
「いったた…。な、なに??」
「ヒナギク!やっと会いに来てくれたんだね!」
「ヒナギク」。その名には聞き覚えがあった。
(どこで?)
わからない。思い出せない。
(一体どこで…)
必死に思い出そうとしていると、背後から威嚇する様な低い唸り声が聞こえた。
「貴様…何者だ?我が主に馴れ馴れしくくっつきおって…」
「お前こそなんだ?此れは俺の物だぞ」
「我はそこな娘、我が主 の妖力が具現化し意志を持ったもの。紅月という」
「俺は彼の雷神、剣の神と云われるタケミカヅチの末裔カヅチじゃ!」
「雷神…?剣の神?」
聞き覚えのない名前に、は首を捻るばかり。しかし、紅月は違ったようだ。その名前に覚えがあるらしい。
「タケミカヅチの末裔だと?」
「知ってるの?紅月」
「嗚呼。しかし、小僧の言う末裔というのは信じ難いな」
いわれ、改めて少年を見てみた。
見た目の年は6歳くらいだろうか?まぁ、妖に限っては見た目の年齢など宛にならないが。
(この子が…雷神?剣の神?)
しかし紅月が信じ難いと言ったのは別の点だったようだ。
「タケミカヅチの末裔…雷神の一族はとうの昔に絶滅した筈だ」
「絶滅…?じゃあこの一級品の封印の壺はどう説明するのよ」
「そうだ!現に俺はここにいるではないか!血は絶えてなどおらぬ!!」