第16章 御槌(ミヅチ)の大妖
一級品の封印具、そして雷神タケミカヅチの末裔と主張する少年 カヅチ。しかし紅月が言うには、その末裔の一族は昔既に絶滅しているという。
「あー…、まぁカヅチの言い分も紅月の言い分も、ちゃんと調べてみないことには本当なのか分からないからさ」
とりあえず一旦解散しよう。そうが言い終えると同時、予鈴が校内に鳴り響いた。
「私も授業始まっちゃうし、カヅチの話もお昼の時か放課後にでも聞くから」
「ヒナギク行ってしまうのか…?」
「ヒナギクさんじゃないよ。私は。…ここでは的場になってるけど」
「…嘘だ。その髪色、瞳、そして何よりその顔。ヒナギクとまさに瓜二つ。ヒナギクでないわけがない」
「そう言われてもねぇ…。私は私でヒナギクさんではないし…」
困ったなと思いつつどうしたものかと思考を巡らせる。今ここでの最前は紅月を見張りとしてここに残すことなのだが。
そもそも、カヅチはこの資材庫から連れ出してもいい存在なのだろうか?一級品の壺に封じられていた程なのだから何かしらのリスクがあるのではないか。
(どうするのが最善なんだろう)
まだ祓い屋のやり方――といっても的場一門のやり方だが――を学びだしただけの私にはどうすることが最善となるのか、まだ判断がつかない。
判断の助言を貰おうと紅月を一瞥すると静かに首を振られた。さすがに紅月も考えあぐねているらしい。
「…ねぇカヅチ。私は授業に出なきゃならないから、申し訳ないんだけどお昼くらいまで紅月と一緒にここにいてくれる?」
「…ヒナギクがそういうなら」
(うん、だから私はヒナギクさんじゃないんだけどな)
そう思うも口にはせず、カヅチが渋々頷いてくれたので気が変わらないうちに紅月をその場に残して資材庫を出て自教室へと急いだ。