第13章 一難去ってまた一難
今私がこうして屋根のある家で暖かい布団の中にいられるのも、あの日主が私を拾ってくれたから。
もし、あの時主に拾われなかったら今頃私はどうなっていただろうか。明日は我が身というような状態だったかもしれない。
「…紅月、いる?」
『なんだ』
「少しでいい。傍に居てくれないか」
『…我は主の用心棒だ。いくらでもいてやる』
そう言うと紅月は狼の姿で実体化し、の傍らで伏せの体制になった。
「ありがとう紅月」
『ふん。礼など不要だ』
「そっか」
も布団に横になり、紅月の毛並みを優しく撫でる。紅月は嫌がるでもなく、ただ大人しく撫でられていた。
暫くし、気分転換がしたいから散歩してくると的場に一言声をかけた。前科があるため一緒に行くと言われたが、今回は紅月もいるからと断った。
紅月もまた主のことは俺が護ると言い、的場は渋々了承した。
『それで出てきたはいいがどこに行くんだ?』
「そうだねぇ…。とりあえず河原の方に行こっか」
『ああ。分かった』
町並みを眺めながら河原の方に歩いて行く。
夕暮れ時で明かりをつける店もちらほらとあり、街頭もいくつかは点灯し始めていた。学校帰りの学生、早くに仕事を切り上げたのかサラリーマンらしき人も何人か見かける。これから仕事に向かう人もいるようだ。
…こうしてゆっくりこの街を見るのは初めてかもしれない。
しかし、こういった光景を見ているとふと思う。
(本当に…私は純粋な人間でも妖でもなく…中途半端な存在なんだな…)
恐らく、半妖で生き残っているのは私くらいのものだろう。そもそも人と妖の間に子ができることすら稀なのだ。
『主、そろそろ着くぞ』
「あ、うん。ありがとう」
河原につき、芝生に腰を下ろす。
河辺では運動部だろうか?数人の男子が走り込みをしているのが見える。