第11章 かけられた呪い
(いえ…それよりもまずは黒い靄の本体を叩くのが先ですね…)
草木の茂る森を進み、奥まったところまで来た。
「確かこの辺りだったはずですが…」
すると、どこからか低く這うような声が聴こえた。
『貴様…この臭い、祓い屋だな?』
間違いない。あの時に聞いた声と同じだ。
「ええ。うちの式が貴方に世話になっているようで」
『ふん。半妖なぞを式に従えるとは随分と物好きな奴がいたものよのぅ?』
「さて。御託はいりません。あの子にかけた呪いを解いていただきましょうか」
言いながら妖力の察知を試みる。
そんな的場を、妖はおかしそうに笑い飛ばした。
『クハハハ…!そう言われてはい、そうですかと素直に解くわけがなかろう!』
「…でしょうね」
『見たところ、その形(なり)からして貴様、的場一門の頭首だな?あの的場一門の頭ともあろう者が単なるいち式神如きにそこまでするような奴でもなかった筈。なれば…』
この声の主たる妖に口があるかは分からないが、あるのなら恐らく口角をニヤリと上げていることだろう。
(…この森が何かしら力を持っているのか察知が効かない…)
『そうさなぁ…。あの半妖の娘、妖力や精気だけでなく身体も上玉のようだし、妖力を最後まで絞りきり全てを蹂躙してからなら解いてやっても構わんぞ?』
その時、的場の中で何かが切れた。
「……全てを蹂躙するだと…?」
今までずっと、彼女は精一杯生きてきた。幼くして孤独を経験し、そして的場一門へ来て初めて知ったであろう人の暖かさ。
彼女をお披露目した会合の日、滅多に見せることのない涙を流して弱々しくも訴えてくれた、確かな想い。
改めて実感させられた雪咲という存在の大きさ。
「彼女は私のモノだ。誰にもくれて等やるものか…!」
そして次の瞬間。