第11章 かけられた呪い
あれからというもの、は一向に目を覚ます気配がない。
依然としての身体は冷たいまま、身動ぎすらせずにただ死んだように眠り続けている。
的場はというと、彼女が目覚めないのは何かしらの呪い(まじない)がかかっているのではと踏み、いくつかの文献をの部屋に持ち込み寝る間も惜しんで調べていた。
何体かの式に、例の森の中を捜索するよう命令も出した。
そうしてから今日で3日。いくら的場でも、そろそろ限界になりつつあろうというその時…
「的場、開けるよ」
廊下側から七瀬が声をかける。
「どうぞ」
襖を開けて入ってきた七瀬の表情は、真剣な面持ちだった。
「なにか分かったんですね?」
「…ああ。分かったには分かったんだが……」
ハッキリしない七瀬。嫌な予感を感じつつも先を促す。
「には確かに呪いがかけられてる。二種類あるみたいだ」
「二種類?」
「一つは、その…黒い靄だったか?それが中途半端な呪いとしてかかっていて、の精気を少しずつ吸い取っているらしい」
「なるほど…。ではその本体はあの森にいるんですね?」
「ああ。そして二つ目だが…――」
(まさか貴女が本当に妖姫だとは思いもしませんでしたよ…)
例の黒い靄が出た森の中を慎重に進む的場。
彼は再び七瀬が言っていた言葉を思い出す。
『そして二つ目だが…、の妖力が暴走しないようになのか、非常に強力な呪い(まじない)がかけてある。それも、そこいらの祓い屋じゃ到底作り上げることなどできないような、本当に優秀な祓い屋なければ施すことの出来ないレベルのものだ。こんなものをあんな小娘に施すなんて、理由は一つしかない』
その理由、それは妖の長となる者。つまり、妖の王だ。
それならば確かに納得がいく。
それに自身、自分が本当に妖の姫君だとは気づいていないだろう。