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よるがあけるよ

第5章 見知らぬS型


「もう出ていけ。お前がここに居る理由は無くなっただろ」
突き出された掌に脅され、出口へ誘導される。
『……最後に1つ質問していいかな。』
「何だ」
『どうして部隊から逃げたの?。』
ドアから出た際に訊くと、旧12Sは不機嫌そうに肩を竦めた。
「逆に、何でお前は部隊に居続けるんだ? 毎日毎日こき使われて、何度死んでも復活させられて痛くても辛くても戦い続けなきゃいけないなんて地獄じゃないか」
ヨルハ部隊員は優秀であればある程、仕事量や難易度が増す。
精鋭部隊に所属していた旧12Sも相当な事をさせられていたのだろう。
「麻痺してたのか、部隊に居たときはそれが当然だと思ってた。僕らは与えられた職と仕事に尽くすのが当たり前だと思ってた。あの双子に直してもらって平穏に過ごす前まではな」
デボルとポポルに目をやる。
「2人には感謝してるよ。何せ僕に新しい生き方を与えてくれたんだからね。人類の為なんかじゃなく、自分達の為だけの生活を送る日々はとても充実している。何もかもから解放された気分だ」
『そう……。』
「お前も自分が本当はどう在りたいのか考えてみろよ。他人に与えられた任務がどんなに壮大で名誉な事だったとしても、自ら望まない限り自分を犠牲にしてまでやる必要は欠片もないんだ。他人の為に殉職なんてもう真っ平だね」
溜まっていた鬱憤でも晴らすかのように次々と言葉を連ねていく。10Dは半分何を言われているのか理解出来ないまま相槌を打っていた。
「そういう訳で僕は今後一切ヨルハと関わらず生きると決めたんだ。僕を邪魔しないでくれよ、絶対に。絶対にだ」
それを最後にドアは閉められる。
ドアの向こうで旧12Sが怯んだ双子を宥める声が微かに聞こえた。
10Dは双子と旧12Sの住み処から踵を返し、静かに駅の方向へと向かう。
『…………。』
旧12Sに言われた言葉を思い返す。
本当はどう在りたいのか、というのがピンと来ない。
私はヨルハ部隊員として生まれた。だから最後の最後までヨルハの為に活動するものだと認識している。
人類の悲願である地球の奪還に貢献するのは生まれた意味そのものだろう。
元は旧12Sもそう思っていたようだが、今はその考えに異論を唱えている。
新しい生き方。自分の為の生活。
よく分からない……地上で暮らすレジスタンスに憧れているんだろうか。
10Dは首を捻りながら進む。
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