第5章 見知らぬS型
『……ねぇ、ポッド。5Bとバンカーでした話思い出せる?。』
「推測:見つからなかった12Sの義体の話」
『そう、それ。』
数週間ほど前、この付近の高台で戦闘中に12Sがロストして、6Eはそのまま置いていった筈だけど5Bは見つけることが出来なかった。
誰かが持っていったんだろうね、という会話が蘇る。
そうだ。5Bは双子に聞きに行く、と言っていた。
『ねぇ、5Bっていう銀髪のヨルハ隊員がここに訪ねて来なかった?。』
訊くと、デボルとポポルはぴたりと談笑を止めて10Dに目を向けた。
「あぁ……あの背の高い女のアンドロイド?」
「背っていうかヒールが高いのよね。あの時は地面が泥濘んでたから歩きにくそうだったわ」
『やっぱり来たんだね。12Sについて聞かれなかった?。』
鉢合わせたなら旧12Sはもう既に連れて行かれている筈だ。
でも2時間前に出掛けたという言葉があるから、その可能性は低い。
まだ5Bが近辺に居るなら、外で生存を確認して司令官に報告していることもあるだろう。
「あのヨルハなら追い返しちゃったわ。機械生命体がバラバラにして何処かに持っていっちゃったんだろうねって伝えたの」
「少し疑う素振りはあったけど、まぁブラックボックスの調子が悪くて良かったな。信号が出てないからとか何とか言って、匿ってないって信じてすぐに帰って行ったよ」
双子の言葉に10Dは唖然とした。
隠す理由は何だろう。他者を騙して楽しむような人格でもないから、生きていることを知らせるなと旧12Sに口止めでもされているんだろうか。
直って動ける状態にも関わらず、他のヨルハとコンタクトを取らないうえ地上のアンドロイドと一緒にひっそり過ごしているのは何故だろう。
デボルとポポルは現在居間にいる12Sを旧12Sだと思い込んでいるが、旧12Sが帰ってきたらどうなるんだろう。
「ねぇ、何でそんなこと聞くのかしら?」
「お前に何か関係があるのかい?」
双子にそう聞かれ詰め寄られた。
5Bが12Sを探しに来たことを気にしたからか、先程から双子に朗らかさが消えている。
『……いや、ちょっとね…………。』
身を引きながら若干焦る10Dの背後で、ポッド107が銃口を構える時の音が聞こえた。
ポッド107から見てもあまり良い雰囲気じゃないらしい。