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よるがあけるよ

第5章 見知らぬS型


『ポッドも?。』
「肯定」
『そっか……。』
無くなったら嫌なものばかりだ、と10Dは溜め息を吐く。息を深く吐く動作で背面のバネが大きくギシリと鳴いた。
向こうの部屋で施術を受けている12Sはどうだろう。
もう少し前に出会っていたら、また違う彼と会えていたかもしれない。
プラグイン・チップなんかで強化された義体だろうから6E達みたいな威張った態度だったのかも、などという想像をした。
『あ、そうだ……日誌も書かなきゃ。』
ヨルハの少数部隊と駅廃墟での事を考えてふと思い出す。
暇なら書くべきだろう。いずれは壊れるのだから、次の自分へ伝えなくては。
起き上がり、端末を表示して文章作成用のツールを開いた。
『前はバンカーでエイリアンのこと書いたよね。』
「肯定」
『今回は色々ネタがあるから書き甲斐がありそう。』
浜辺や水族館廃墟のことを思い出しながら10Dが綴っていく。
思ったことを書こうとしているが、どうしても報告書のような仕上がりになってしまうなと文を読み返す。
暫く日誌を書いて過ごしていると、ポポルが声を掛けてきた。
「10D、一段落着いたわ。今ソファで寝かせているところよ」
『お疲れさま。随分早いね。』
端末をしまいながら10Dが目を向ける。
「さっきまで喋ることしか出来ないくらい損傷が酷かったじゃない。でも色々復旧させられたから、あと少し休めば十分よ」
『さすがー。直してくれてありがとう。お礼は何がいい?。』
「いえ、お礼なんていいの。12Sは私達が助けたくて治したんだから」
言いながらポポルが10Dの横に腰掛けた。
「疑問:12Sのデボルとポポルとの関係性」
ポッド107がポポルに問いかける。
「初めて会ったのは数週間くらい前だ」
答えたのはデボルだった。デボルも寝室に入り、2機の向かい側のベッドに座る。
「ここからそう遠くない場所で壊れてるとこを発見して、私達で直したのよ。見つけた時はもう死んじゃったのかと思ったくらい損傷が酷かったのだけど。存外丈夫なのね、ヨルハの機体って」
「ははっ。埋葬しようってポポルが提案して、手ぇ伸ばしたらガッツリ掴まれたよな。あの時の吃驚したポポルの叫び声ときたら、今思い出してもおかしくって……」
「あの時はデボルもキャーッて叫んでたでしょっ! 随分と可愛い悲鳴だったわね?」
思い出話に華を咲かす双子の様子を10Dが何となく眺める。
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