• テキストサイズ

よるがあけるよ

第5章 見知らぬS型


「ポポル、見なよ。12Sだ」
「……あら、本当ね。何処でこんな大怪我したのかしら」
『12S、前に会ったことあるの?。』
双子の様子に10Dは首を傾げながら訊く。
「いや……初対面だ」
「何言ってるのよ、2時間前に出掛けて以来じゃない」
「や、本当に……」
「頭も打っちまったらしいな。ポポル、早く直してやろう」
食い違いながらも一方的に直す方向に進んでいくさまを10Dがおろおろした様子で眺める。
初めから直してもらうのが目的だったが、どうにも状況が変だ。把握しきれていないことがあるらしい。
「10Dは暫く待ってて。あっちの棚にある本も好きに読んでくれていいから」
『分かった。じゃあ……12Sをよろしくね。』
いざこざは機体が直ってから確認すればいいかな、と10Dはやや心配しながらもその場を離れる。
ポッド085は10Dに付くのを辞め、12Sの傍へ飛んで行った。
仕切りのある向こう側の部屋へ進む。暗がりの中、2つの寝台と大きめの棚があるのを確認した。
『ポッド、光を強くして。』
「了解」
辺りを照らして棚を物色する。古びた本が数冊並んでいる。おそらく拾い物だ。
小説や詩集が多い。棚に埃が積もりかけていることから、最近は手に取られていないと窺える。
『マザぁ……グース?。』
「推測:詩集」
『詩か……あんまり馴染みがないな。』
何となく手に取りページをパラパラとめくる。
空白を大胆に取り入れた紙に短い文と小さな挿し絵が付いている。ほぼ全ページに渡ってそれが繰り返されていた。
『うーん……よく分からない。これ人類は普通に理解出来たの?。』
例えば見てよこれ、と10Dがポッド107にとある項を見せつける。
「疑問:ハンプティ・ダンプティとは」
『塀から落ちちゃったらしいんだけど、誰も元通りに出来ないんだって。でもこんなこと書く意図が分からない。』
短い文章を率直に読み取る。
挿し絵には大きな丸い頭の人類がちょこんと塀に腰を据えていた。
「報告:人類の文学には何気ない事柄に何らかのメッセージを籠め教訓とする手法が多く存在する。」
『メッセージねぇ……分かりやすくズバッと提示してくれればいいのに。』

ハンプティ・ダンプティ 塀に座った
ハンプティ・ダンプティ 転がり落ちた
王様の馬をみんな集めても
王様の家来をみんな集めても
彼を元には戻せない
/ 138ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp