第5章 見知らぬS型
目的地のすぐ傍まで来た。
建物の窓から部屋を照らすランプの灯りが洩れ出ている。
『よし、ほぼ到着……っ。』
走っていた10Dは減速し、動作を徒歩に変えた。
『外出してないといいんだけど、どうだろう。』
「報告:窓のカーテンが閉められた。住人の存在を確認」
『本当だ。居るね。』
足音と声でアンドロイドの接近に気付いたのだろう。カーテンの隙間から覗いた光もすぐに消えてしまった。
相変わらずの警戒ぶりだ、と10Dは少し身構える。
デボルとポポルは護身用の武器を持っていた筈だ。今は両手が塞がっているため万が一勘違いで襲われた場合、回避は難しい。
『……デボル、ポポルー!。私は10D。覚えてる?。前にピジュンの紹介で会ったことあるでしょ。』
建物に向かって声を掛ける。
心当たりがあったようで、赤い髪のアンドロイドが窓と扉から各々顔を出した。
「久し振りね」
「何の用だい」
ポポルがランプを点け直し、デボルが持っている武器を後ろ手にやりながら訊いた。
『今日は頼みたい事があって来たの。仲間の治療なんだけど、お願いできる?。』
10Dの背負っているアンドロイドを双子が一瞥する。
「またヨルハか……どうする?」
「困ってるみたいだし看るだけ看ましょうよ。……あなたたち、入ってちょうだい」
短い相談の後に招き入れられる。
『ありがとう。お邪魔します。』
「どうも……」
10Dと12Sが入り際に礼を言う。
「ここに寝かせて」
ポポルに誘導され、普段はテーブルに使われているらしき台に12Sを横たわらせる。
『腕と脚ひしゃげてるけど大丈夫かな?。』
「代わりのパーツ用意出来るなら完璧だけど、無くても一応機能するようには出来る」
『本当?。すごいね。』
「とは言っても限度はあるんだが……ちょっと見せな」
デボルが12Sの左半身を確かめる。
「まぁ、これならなんとか………んん?」
不意にデボルが12Sの顔を見ると、少し驚きも含んだ調子で唸った。
そのまま断りも入れずに12Sのゴーグルをむしり取る。
「お前……また怪我したのか! しかもこの前より酷いじゃないか」
「え……?」
デボルの様子に12Sが戸惑う。デボル・ポポルタイプとの対面は今日が初めての筈だけれど、デボルの発言は間違いなく面識があることを踏まえた内容だった。
『どうしたの?。』
声を荒げたデボルの様子を10Dとポポルが気にする。