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よるがあけるよ

第5章 見知らぬS型


『…………。』
見覚えのある景色が一向に見えてこない。10Dは自身の欠陥を認めたくないようで、忙しなく右に曲がり左に曲がり、路地に入り大通りに出て……を繰り返していた。
「10D……目の前に駅が見えてることは分かってるか?」
『………今わかった。』
「そもそも何処に向かってるんだ?」
背中の12Sが少し呆れた様子で問いかける。自身を助けるために必要なものがこの地区にあるとは思えないと溜め息を吐いている。
『ここから少し離れた高台の下に治療やメンテナンスに特化したアンドロイドが住んでるんだ。そこに行くの。』
「報告:目的地をマップにマーク。ゴーグルに転送」
『あっ、私だけの力で辿り着こうと思ったのに……。』
ポッド107が道案内を始めてしまったことに10Dは不満を示す。
「推奨:一刻も早く12Sの損傷を直す」
『止血もワクチンもしてるし元気そうじゃん……?。』
「警告:一刻も早く12Sの損傷を直す」
『うっ……わかったよ。わかったって。12S、少し走るから気を付けて掴まっててね。』
ポッド085の威圧に怯んだ10Dが直ぐさま考えを改め目的地へ急ぐ。
ビルの間を駆け抜け、高台の方へと順調に進んでいった。
「ん………?」
途中、ふと12Sが何かを気にした様子で唸るのを聞いた。
『どうしたの?。』
「いや……何でもない。多分僕の見間違いだ」
軽く首を振りながら返す12Sの声色は少し不穏な調子だ。
『大丈夫?。引き返そうか?。』
「いや、いいんだ。あるはずないことだから、きっと気のせいだ……」
『……そっか。』
気になって立ち止まるも却下され、また矢印に向かって走り出す。
高台の麓に1つ、小さな灯りが見え始めていた。









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