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よるがあけるよ

第5章 見知らぬS型


「10D……大丈夫か?」
『うん、大丈夫……。』
機械生命体との会話ですっかり悄気てしまった10Dを12Sが心配する。
「推測:10Dはあの機械生命体に対して後ろめたい気持ちを持っている」
「ポッド……言わなくていいよ」
ポッド085の言葉に12Sが制止をかける。
「野暮だな、まったく……。ごめん、10D」
『別にいいよ。当たってる。』
改札を通り抜けながら10Dが返した。
その先の広間に出ると、しばし左右を見回し立ち止まる。
『……ポッド、レジスタンスキャンプはどっち?。』
「報告:左へ曲がり、外へ出て西へ進んだ先にある」
『ん……じゃあこっちか。』
ポッド107が示す方向とは逆に進む。
「報告:レジスタンスキャンプは反対の方向にある」
『いや、キャンプには行かないからいい。』
東側の出口に向かって歩いていく。
この駅廃墟は鉄道駅と百貨店が合体した巨大な複合商業施設だったらしい。天井から埃まみれの看板があちこちに垂れ下がって道案内をしている。
レジスタンスキャンプが幾つあっても足りないくらいの広大な敷地に10階以上の高さで建てられているこの施設は他の建造物に比べて随分頑丈だ。
故意に破壊された箇所はコンクリートが割れ鉄筋が折れ曲がったりなどしているが、経年劣化での崩壊はそれほど目立っていないようだった。
風化した床のタイルの隙間に躓かないように気を付けて歩く。
出口まで近付くと、強い風が吹き込んできた。
駅の前の大通りを挟んで並ぶビル群が風の通り道を作っている。少しふらつきながらも踏ん張りをきかせて外へ出ていく。
暗視ゴーグル越しにチラチラと動く影が見えた。
多分あれは機械生命体だ、と10Dはポッド107とポッド085を自身より前に行かせる。
『危なくなったら攻撃よろしくね。』
敵意があった時だけ、と釘を刺す。
もしかしたら先程見かけたように友好的な機械生命体の残りが居るかもしれない。安易に攻撃して彼の仲間を殺してしまったら申し訳ないだろう。
これ以上あの機械生命体が悲しむことをしたくない思いで10Dは人気のない道を進む。
目指すのは高台の方にある双子のアンドロイドが隠れ住む建物だ。
以前レジスタンスのピジュンに連れて行ってもらった時は高架下の壊れたフェンスを通って左斜めに向かっていったから、今回も同じ方向に行って問題ないはず。
安直に考えて10Dが歩いていく。
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