第1章 常闇のアンドロイド
離陸すると、あっという間に地面が離れていった。
地上にはちらほら明かりが見える。アンドロイド達の集まる場所と、所々に設置された外灯だ。
長い目で見れば、場所が変わっていたり減ったり増えたりしているソレ。最近は機械生命体が少し強くなったようで、キャンプ及びレジスタンスの数は減少傾向にあった。
大気圏からぼんやりとした疎らな明かりを眺めながら10Dはバンカーを目指す。
軌道に乗っている宇宙ゴミを避けながら上昇を続けていく。
昔は人類の打ち上げた人工衛星が沢山あったらしいが、もうほとんど全部が役目を失い落下したそうだ。今は隕石の欠片や朽ち果てた人工衛星の残骸が漂っているだけだ。
やがて10Dはバンカーに辿り着くと、自分の属しているバンカーかどうかをよく確認してから入った。
軍用基地としてのバンカーは全部で9基あるから気を付けなければいけない、と生まれた当初オペレーターや司令官から口酸っぱく言われたものだと10Dはつい数年前の事を思い出す。
自分の部屋がないことや自分の担当のオペレーターが居ないことを自覚して初めて間違いに気付いたりするほど、バンカーは見分けが付きにくい。加えて司令官も見た目がほとんど同じだから、間違いに気付かずに報告しに行くと話が噛み合わないなんてこともしばしばあった。
飛行ユニットから降りて、格納庫の通路を歩く。
戦闘特化型のヨルハ達がこれから任務に赴くために持ち物の確認をしていたり、洗濯班が隅に寄って雑談をしたりしている。
それを横目に見ながら出口まで行くと、エレベーターから誰かが出てきた。
『5B、君もバンカーに戻ってたんだね。』
「久し振り、10D……四肢のサブプロセッサーの調子がおかしかったから、直しに来ていたのよ」
まだゴーグルを身に着けていない5Bが10Dを薄目で見つめる。
5Bはアンドロイドながら自身の目付きの悪さを気にしているのだ。だからなるべく目を細めて、ほぼ瞼を閉じているようにみせている。
『格納庫に来たってことは、今から地上に行くの?。』
睫毛に埋もれた5Bの眼を覗きながら10Dが訊く。
「そうよ。丁度入れ替わりになってしまったわね……ゆっくり話したいところだけれど、早速新しい任務が入ったからもう行かなければ……」
『うん、今度また会ったとき話そう。じゃあ任務気を付けてね!。』