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よるがあけるよ

第3章 平和主義者


頭上で飛んでいた筈の列車の機械生命体が、まっすぐこちらに向かって来ていた。
『うわ………っ。』
「はぁ……!?」
2機は焦った様子でほぼ同時に走り出す。
目の前に迫る機械生命体から距離を置こうと逃げるが、敵の接近に気付くのが遅すぎたため間に合わなかった。
10Dのすぐ横で、B型の姿が消える。
車体の下に付いた無数の手足が彼女を拐ってしまったのだ。
「31Bーーー!!」
機械生命体を追いかけながら部下のE型が仲間を大声で呼ぶ。
B型を捕らえた機械生命体はまた空へ上昇した。
「リーダー、どうしましょう。これではポッドの攻撃が31Bに当たってしまいます!」
ポッドでの射撃を中断し、E型がリーダーのE型に判断を求める。
「かまわん、やれ。今のところポッドでしか攻撃する手立てがないのだ」
「ですが……!」
下された判断に納得いかない様子でE型が反論する。
躊躇うE型は上空でもがくB型に目を向けた。
「31Bはもうずっとデータのアップロードを行ってないんですよ? 次の義体になったら私達の知る31Bじゃなくなるんです。助ける方法を探しましょうよ!」
「22E、お前の気持ちはよく分かるぞ。だが正直ポッドでの攻撃もあまり効果がなく、この一方的な状態が長く続けば我々が全滅してしまうかもしれないんだ」
狭いホームで降り頻るエネルギー弾を避けながら、ポッドのみで攻撃を行う。
1機が人質に取られ、2機は立つのが精一杯。随行支援ユニットは最初の6機のままだが、戦えるアンドロイドは3機のみになった。
「せめて接近戦が出来れば……12Sが居れば……!」
E型が悔しげに呟く。
10Dが生き残った機械生命体の数体を物陰に誘導しながら考える。
スキャナータイプならあの距離でもハッキングが出来る。爆破も訳ないだろう。
ハッキングで飛行能力を無効にすれば他のヨルハも攻撃でき、より有利な戦いに持ち込める。
だがS型以外の型番は他者へのハッキングを原則禁止されていた。免疫のないアンドロイドがハッキングを行うと論理ウイルスに感染するリスクが高いためだ。
論理ウイルスに感染すれば、自我を失いウイルスを撒き散らしながら暴走することになる。それは近くのアンドロイドも危険に晒されるということでもあった。
『…………。』
10Dは飛行する列車の機械生命体を見上げる。
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