第3章 平和主義者
雨のように降り注ぐ大量のエネルギー弾が迫っていた。
本当に泣いている場合ではなかった、と10Dは直ぐ様エネルギー弾を避けながら屋根のある場所まで走る。
『まさか、こんなことになるなんて……。』
エネルギー弾の当たらない所から状況を確認しようとした。
先程までレールの上に居た列車型の機械生命体が空を飛んでエネルギー弾を放っている。
それを2機のヨルハ隊員が随行支援ユニットで射撃し、別の1機は逃げる機械生命体達を追いかけ回している。そこから少し離れた所に中破した2機のヨルハ隊員が戦闘に復帰しようとしていた。
「報告:頭上の大型機械生命体は膨大なエネルギー出力により浮遊している模様。推奨:討伐は他のヨルハ隊員に任せ、10Dは離脱する」
『そっ、そんなこと出来ないよ!。とにかく残りの機械生命体達を守って、大型機械生命体を止めなきゃ。』
焦った様子で10Dは機械生命体を破壊しているB型の元へ走り出す。
自分の撒いた種だ。自分が何とかしなくちゃいけないんだ。
『……これ以上はさせません!。』
武器を振るうB型の前に躍り出て、受けそうになった攻撃を自身の小剣で流す。
攻撃を受け止めるだけなら識別信号は反応しないようだ。
目の前のB型は識別信号機能が反応したらしく、ほんの一瞬ビクッと体を硬直させた。
「……邪魔立てするか。何故そこまで機械生命体を庇うんだ?」
『彼らは確かに大型の機械生命体を造りはしましたが、貴女方が来るまでは彼らも頭上の列車も、何も問題なかったんですよ!。彼ら自体は敵ではないんです、今倒すべきなのは貴女方が暴走させた列車の機械生命体の方でしょうが!!。』
頭上を指差して示す。相変わらずエネルギー弾が上から降っていた。
「知るか! こっちはリーダーの命令でやってるんだ。お前の意見なんて聞く必要はない!」
『何でそう分からずやなんですか!?。優先順位くらい自分で判断してくださいよ!。リーダーが全て正しいと思ったら大間違いなんですからね!。』
お互いキレ気味に言葉を交わす。周りはミサイルやガトリングなどの射撃音が響いて会話が聞こえにくい為、自然と大声になる。
「何をやっている、避けろ!」
少し離れた所からリーダーのE型が10DとB型に叫んだ。
その声に2機は上を見上げる。